本記事は、「diary|2023/03」で2023/03/15(Wed.)に書いたのを少し修正したものです。
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みんなが観た観たよかったよかった言うてるので、私も『RRR』を出町座で観てきた。出町座美術部の『RRR』推しは凄くて、地下スクリーンに向かう通路はハチャメチャに装飾されている。
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『RRR』を勧めてくれた人は「深く考えないで観た方がいい」と言っていたが、深く考えて観るに値する出来のいい映画だった。CGがかなりヘボかったが、それもまあ一つの味だろう。エンターテインメントの強度としては最高級と言っても過言ではない作品だった。
私は全然インド映画に詳しくないので、なぜインド映画では人々が突然踊り出すのか等々は分からないが、少なくとも『RRR』にそうした非現実性を帰するのはお門違いだろう。第一に、ミュージカルも突然歌い出すという点で、インド映画にだけそのおかしさを指摘するのは不適切(あるいは説明を要する事柄)だろうし、第二に、『RRR』は文字どおりの神話であって——ラーマは終盤で神になった——神話に脚色はつきものだからだ。
出町座は「クセツヨ音デカ上映」と題していたが、決して名ばかりではなく、スクリーンは爆音でぶるぶる震えていた。こういう設定は流石にシネコンとかではできないので、出町座で観れて良かった。二度目三度目を観たい人、初めて観る人、みんな出町座へ急げ。
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ただ、ナショナリズムに片足どころか頭までどっぷり突っ込んでいるところは怖い部分かもしれない。その苦々しさを直視することなしに「『RRR』最高!ナーーットゥナットゥナットゥ」とかやってる人間は反省した方がいいと思う。これだから戦争は終わらんのだわ。例えば、エンドロールの大団円でビームサイドのヒロインであるジェニーがほとんど出てこなかった(チラチラとは出ていたが、5秒も出ていないくらいだろう)のとかは、露骨に〈出自がイギリスの人間はインドを称揚するのには不適切だ〉というメッセージになっているのではないか。
これについてはsaebou(北村紗衣)さんのレビューも参照。
植民地支配を扱った映画、とくに『RRR』みたいな娯楽的なものは顕著にそうだと思うんだけど、悪役の植民地官僚とかが物理的に残虐なだけなの、私はあんまり良くないと思うんですよ。植民地支配の悪ってそれ以上のもので、むしろ人の心と社会構造への働きかけだよね?
— saebou (@Cristoforou) 2023年2月28日
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もう少し内在的な批評をば。インターバルの前、つまり第一部はテンポがよかったが、インターバル後、つまり第二部は——鞭打ちの拷問の後から特に——テンポが悪かったと思う。ポスターでは「友情か?使命か?」というジレンマを謳っていながら、最終的には友情と使命が悪魔合体して憎き大英帝国を打倒するというシナリオになっていて、いやいやナショナリズムに突っ込むよりこの「友情 v.s. 使命」のテーマでずっとやった方がいいよ、これはもう蛇足だよと思いながら観ていた。